情報の海の漂流者

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「平均」の意味うんぬん


大学生の24%が「平均」の意味を正しく理解していないなど、基礎的な数学力、論理力に大きな課題があることが、日本数学会(理事長・宮岡洋一東京大教授)が実施した初の「大学生数学基本調査」で明らかになった。
(中略)
その結果、全問正答した学生は、わずか1・2%だった。「偶数と奇数を足すとなぜ奇数になるか」を論理的に説明させる中3レベルの問題の正答率は19%。小6で学ぶ「平均」についても、求め方は分かるが、「平均より身長が高い生徒と低い生徒は同じ数いる」などの正誤については誤答が目立ち、中堅私大では半数が誤答だった。


「平均」の意味、大学生の24%が理解せず : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

こちらの話題について。

に問題と正答例があったのでチェックしてみたのだが、読売の記事と元の問題文では質問の意味が変化している様に思えた。


例えば「平均より身長が高い生徒と低い生徒は同じ数いる」という問題。
読売の表現の場合「一般論として身長の分布はほぼ正規分布する場合が多い」という知識を元に「正規分布するグラフにおいては平均値と中央値が一致する」という知識を問う問題として解釈することできる。
14:57 2012/02/27修正。男女で体格差があるので共学では正規分布しないことを確認しました。

しかし、元の問題文では以下のようになっている。

第一ステージ(2題・5分)

1-1 ある中学校の三年生の生徒100人の身長を測り、その平均を計算すると163.5cmになりました。この結果から確実に正しいと言えることには◯を、そうでないものには☓を、左側の空欄に記入してください

□ (1) 身長が163.5cmより高い生徒と低い生徒は、それぞれ50人ずついる。
□ (2) 100人の生徒全員の身長をたすと、163.5cm x 100 =16350cm になる。
□ (3) 身長を10cm ごとに「130cm 以上で140cm 未満の生徒」「140cm 以上で150cm 未満の生徒」…というように区分けすると、「160cm 以上で170cm 未満の生徒がもっとも多い」


問題文を参照するとこの問題は「中央値と平均値と最頻値が常に同じであるか否か」と聞かれているという事がわかる。
身長が完全に正規分布している場合は中央値と平均値と最頻値が一致する。しかしそれ以外の場合では一致するとは限らない。
問題の例では完全な正規分布であるという保証はなく、一人のズレもなく平均より背が高い人と低い人がの人数が一致するとは言い切れない。


したがって(1)は☓である。
読売の記事と実際の問題文では要求精度が異なり、両者の正答が一致しない可能性がある。


(2) 100人の生徒全員の身長をたすと、163.5cm x 100 =16350cm になる
これは相当悩んだ。
身長は基本的に実測値であり計測誤差が存在すること。小数点以下第2位の取り扱いについての記述がなく、丸め方が明記されていないことなどを考慮すると1cmの精度を確実に保証できるのか疑問であったからだ。
通常であればこの辺の話は無視していいのだが「確実に正しいと言える」のかとまで言われたら悩んでしまう。
僕は報道でこの調査を知り、数学知識を確認する趣旨で行われたものであることや、この設問では小学校レベルの知識を問うていることを知っていたため、ここで問われているのは測定誤差ではないと判断できたが、予備知識なく大学の授業でこの質問をされた場合、僕は間違えていた可能性がある。
正解は◯
この設問については、被験者が何を問われているのか把握できる状況だったのか否かが気になるところだ。
ここで間違えた人は本当に数学ができない人だったのだろうか?

(3) 正規分布しているとは限らないので最頻値が真ん中に来るとは限らない
×
学校の生徒はランダムに集まっているとは限らない。
例えば、バスケットボールやバレーボールの強豪校では、背が高い人が集まる傾向があるので高身長が正規分布に比べて有意に多い可能性がある。