情報の海の漂流者

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岩波の「縁故採用」についてのメモ

今話題になっている岩波の"縁故採用"について。


応募資格は“コネ”のある人―。老舗出版社の岩波書店(東京)が、2013年度定期採用で、応募条件として「岩波書店(から出版した)著者の紹介状あるいは社員の紹介があること」を掲げ、事実上、縁故採用に限る方針を示したことが2日分かった。


 同社の就職人気は高く、例年、数人の採用に対し1000人以上が応募。担当者は縁故採用に限った理由を「出版不況もあり、採用にかける時間や費用を削減するため」と説明。入社希望者は「自ら縁故を見つけてほしい」としている。


応募条件は「コネのある人」 岩波書店の「宣言」に投稿サイト盛り上がる ― スポニチ Sponichi Annex 社会

通常の企業が「社員もしくは取引先の紹介状必須」とした場合、新卒の人が大学内でコネを見つけることは困難だ。
大抵の場合、学校の外にでて自力で営業し、コネを作りあげることになるだろう。
しかし学術系出版社である岩波書店の場合、大学内でコネを見つけることは他の企業ほど難しくない。
単著・単訳書に限っても、殆どの大学で最低1〜2名の教員が岩波から出版している状況であるし
共著や部分執筆で出した人まで含めれば、適当に石を投げれば当たるほどである。
"岩波書店(から出版した)著者"は、案外大学生の側にいるのだ。


現在、大手予備校がネット上で公開している大学ランキングを見ながら偏差値が上の大学から順番に確認していているのだが、文系学部を持つ大学で、岩波から本を出版した経験がある教員がゼロ人というケースは現時点で一つも見つかっていない。
(現時点では偏差値55まで調査して、そこで気力が尽きてダウンした。気が向けば54以下も調べる)

図表:岩波から本を出版した経験がある教員の有無(1ページ目)



以上により

岩波書店は日本を代表する学術系出版社であり、学内でコネを形成することの難易度が他の企業に比べて低い。
「コネ・縁故必須」という言葉が持つ一般的なイメージと、今回話題になっている採用条件との間にはズレがあるように思える。
(実際に採用される人がどのような人物であるかは別として、足切りラインの設定条件としては血縁関係や特殊な学外活動に依存する部分が一般例より少ない)
縁故という言葉が持つイメージに引きずられすぎると、過剰反応になってしまう。
以上を踏まえた上で、それでも問題があるか否かを議論した方が建設的だろう。