情報の海の漂流者

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橋下徹大阪市長とその取引したら大赤字ですね

アルバイトをして家計を支えている。大人が長時間働けるように家事を助けている。
そんな高校生は今時は珍しくありません。普通にいます。
これは要するに高校生の体力や時間が家庭を維持するためのリソースとして機能しているわけです。
そういった家庭で子供の拘束時間が増えると、本人のアルバイト時間が減ったり、大人が働ける時間が減ったりして収入がダウンします。
この前提を元に以下のニュースを読んでみましょう。


橋下徹大阪市長は27日、記者会見し、大阪市と大阪府で制定を狙う「教育基本条例案」に盛り込むとしている3年連続定員割れの府立高校の統廃合で、経済的に困難な家庭の子どもが遠距離通学になっても、「通学定期代くらいバイトして稼げばよい」と強弁しました。


 橋下市長は「生徒が集まらない学校をずっと置いておいても仕方がない」とし、「本当にそういう事情があるなら電車代を助成しますよ」と発言。一方で、「本当に家庭の事情で苦しいというなら通学定期代くらいバイトして稼ぎゃあいい。授業料までただにしてるんですから。通学代が出せないから地元に高校を残さないといけないなんて、そんな理屈は通らない」と述べました。


「通学代、バイトで稼げ」/橋下大阪市長が暴言|しんぶん赤旗


この市長の発言、高校生の時間や体力はリソースであるという観点が見事までに欠如していますね。
地元の高校が廃校になり、遠くの学校に通うとします。
通学時間が片道1時間増えた場合で計算してみましょう。

1.生徒の拘束時間が一日二時間増えます。
2.公立高校の年間登校日数は約200日なので年間400時間ほど拘束時間が増えることになります。
3.大阪の最低賃金は786円です。

(400 x 786 = 314,400円)
通学時間が片道1時間増えるごとに、地元の学校に通ってその時間をアルバイトに費やしていた場合に比べて年間約31万円の収入減になるわけです。

無償化前の府立高校授業料

大阪府の公式サイトのキャッシュに無償化前の府立高校の授業料の表が残っていました。
授業料は年間144000円だったようです。

比較してみよう

高校無償化で授業料の負担額がゼロになりました。(+144000円)
そのかわりに片道1時間分遠い高校に行くことになり、バイト時間ヘリました。(-310000円)
144000-314,400=-170400円

(本当は税金や空調費無償化の計算をしなければいけないのですが結論が変わらないので省略します)

電車代を助成されても年間17万円ほど家庭の収入が減ります。
交通費を自己負担ならばもっとエラいことになるでしょう。
要するに、高校生がバイトして学費を稼いだり家計を助けたりするというモデルの家庭にとって、地元の学校が潰れて遠距離通学を強いられることのデメリットは高校無償化の金銭的メリットを上回るわけです。


このような家庭にとって高校無償化したから遠距離通学費を負担せよという案は、パッと見では以前より負担が軽くなったように感じるかもしれませんが、実は大幅な負担増になります。
つまりこの取引は当事者にとっては大赤字というわけです。
学校統廃合に伴う遠距離通学の問題というのは交通費の増加よりもむしろ、通学時間・拘束時間の増加により本来他の目的で使えたはずのリソースを自由に使えなくなることにあります。
携帯電子機器の発展により電車内でもある種の勉強をすることが可能になったため、通学時間を勉強に当てることはできるようになってきましたが、家事やアルバイトにあてることは事実上不可能です。
通学時間増大の影響はある種の家庭に選択的にのしかかってくるのです。