情報の海の漂流者

web上をさまよいつつ気になったことをつぶやいています。

インターネットニュースにおける「無断引用」という語の使用例

「無断引用」という言葉を使うのはおかしいのではないかという意見があります。


引用(いんよう、英語:citation, quotation[1])とは、広義には、他人の著作を自己の作品のなかで紹介する行為、先人の芸術作品やその要素を自己の作品に取り入れること。報道や批評、研究などの目的で、自らの著作物に他の著作物の一部を採録したり、ポストモダン建築で過去の様式を取り込んだりすることを指す。狭義には、各国の著作権法の引用の要件を満たして行われる合法な無断転載等[2]のこと。


引用は権利者に無断で行われるもので、法(日本では著作権法第32条)で認められた合法な行為であり、権利者は引用を拒否することはできない[3]。権利者が拒否できるのは、著作権法の引用の要件を満たさない違法な無断転載等に限られる。
引用 - Wikipedia

引用とはそもそも無断で行われるものであり、著作権上の要件を満たしていれば、合法な利用法なんですよね。
しかし、ネット上では「無断引用」という言葉があちこちで使われています。


この現象を説明する説のモデルに、「無断引用」という言葉がマスコミ語として定着していて、それを読んだ人達が「無断引用」という語を使っているという説があります。
今回は、その関係の資料として、ネット新聞における、「無断引用」の使用例をまとめてみました。*1

朝日新聞(asahi.com)

asahi.comにおいては、2005年、2007年の使用例がそれぞれ一例見つかりました。
2009年の使用例が見つからなかったことから、無断引用という語を使わない方針にシフトした可能性があります。


京都大は20日、同じ研究科の女性の助手の論文を無断引用したり、激しい叱責(しっせき)を長期間にわたって行ったりするなどの精神的な苦痛を与えていたとして、大学院農学研究科の教授(60)を、停職3カ月の懲戒処分にした。
asahi.com: 京大教授、助手の論文を無断引用 停職処分に - 社会のキャッシュより


読売新聞朝刊に連載中の小説「声をたずねて、君に」の挿絵を担当したイラストレーター中島恵可(けいか)氏(51)=高知県在住=が他人の写真を無断で利用していた問題で、同社は2日、さらに35点の挿絵に著作権侵害の疑いがあるとの調査結果を発表した
asahi.com:新たに写真35点の無断引用発覚 読売新聞の小説挿絵 - 文化一般 - 文化・芸能

読売新聞(読売オンライン)

2009年5月の使用例もあり、ごく最近まで「無断引用」という語が使われていた事を確認しました。現在ではどうなんでしょうね。


日本民間放送連盟(民放連)が、地上デジタル放送完全移行のPRキャラクターとして先月発表した「地デジカ」=写真=のホームページ上での説明文の一部が、インターネット上の無料百科事典「ウィキペディア」内の「シカ」の説明文から無断引用されていたことが8日、わかった。


(中略)


民放連によると、無断引用があったのは先月27日に発表した地デジカの説明資料の内容の一部。生物学的な種別や生息状況などの説明文が、ウィキペディアの説明文からそのまま無断引用されていた。無断引用は、インターネット上で指摘があり、発覚した。
「地デジカ」説明、ウィキペディアから借用 : ニュース : ネット&デジタル : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


岡山大から無断引用で謝罪


前橋市立前橋工科大学(江守克彦学長)が2008年度の学生便覧に掲載した「教育理念」を、岡山大学の理念から無断でそのまま引用していたことが、わかった。


(中略)


江守学長によると、学内から6月ごろ、酷似していると指摘があった。「理念」は複数の教官が作成にあたった。中心となった教官は06年度末に退職しており、ほかの担当教官らの話などから無断引用と確認した。理念を新たに作成中で、学生に経緯を説明する。
前橋工科大が「教育理念」を拝借 : ニュース : 教育 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

毎日新聞(毎日jp)

2009年8月の使用例が確認できました。現在でも「無断引用」という語を使っているようですね。


消費者金融への過払い金回収などについて、東京弁護士会の石丸幸人弁護士と石丸弁護士が代表を務める「アディーレ法律事務所」が執筆・監修した書籍を巡り、名古屋消費者信用問題研究会の弁護士5人が25日、「同研究会の著作物の内容が無断引用され、著作権を侵害された」として、石丸弁護士と同事務所に約630万円の損害賠償と謝罪広告の掲載などを求める訴えを名古屋地裁に起こした。
提訴:「著作物無断引用」 名古屋の5弁護士、石丸弁護士に損賠など求め - 毎日jp(毎日新聞)


北海道議6人が4月に行った韓国視察の報告書について、その大半がインターネット上の百科事典や資料からの引用だったことが分かった。議員の海外視察を巡っては以前から「単なる物見遊山」「公費の無駄遣い」などと批判が強く、道議の姿勢が問われそうだ。


(中略)


報告書は5月12日、議会事務局に提出されたが、関係者によると、内容の大半は誰でも自由に記述できるインターネット上の百科事典「ウィキペディア」や資料をほぼそのまま引用していた。無断引用のため、各道議は報告書に引用元を明記する修正を届け出たが、自らの手で書き直すことはしないという。
北海道議:視察報告書の大半ウィキペディアなど引用 - 毎日jp(毎日新聞)のgoogleキャッシュ


前橋市立前橋工科大(江守克彦学長、学生数約1100人)の「教育理念」が岡山大の理念からの無断引用だった問題で、工科大は8日、新たな教育理念を発表した。


(中略)


江守学長によると、無断引用の報道後、当時、その理念作成を担当した元教授の男性から「すみません」と謝罪の電話があったという。元教授はすでに退職しており、同大は聞き取り調査などは行わない方針。江守学長は「盗用を認めたものだと認識している」と話した。【杉山順平】
新理念を発表「地域と社会の発展と福祉に貢献する工学を追求」 /群馬 - 毎日jp(毎日新聞)のgoogleキャッシュ

産経新聞(MSN産経ニュース)

2009年8月の例が複数確認できました。
現在でも「無断引用」という語を使っている様子。


消費者金融問題に関する著書の内容を無断引用され、著作権を侵害されたとして、名古屋市の弁護士5人が25日、テレビ出演などで知られる石丸幸人弁護士と代表を務める「アディーレ法律事務所」(東京)に、約630万円の損害賠償と石丸弁護士が執筆した本の販売禁止などを求め、名古屋地裁に提訴した。
無断引用で著作権侵害」 石丸幸人弁護士に賠償請求 - MSN産経ニュース


トムソン・ロイターは4日、公式ブログ上で「ロイターの記事はリンク自由。適切な引用や参照は許可のみならず推奨する」との見解を示した。ブログでの記事や見出しの無断引用に懸念を示していたAP通信が今年6月、ニュースの引用では5単語につき7.5ドルの支払いをブロガーに要求していたことから、ネット上でニュースの引用についての議論が激化しそうだ。
【Web】ニュース引用はロイターで? - MSN産経ニュース


インターネット上からエピソードの多くを無断引用していたことが発覚したベストセラー「最後のパレード ディズニーランドで本当にあった心温まる話」(サンクチュアリ・パブリッシング)は、版元が著作権法違反を認め、自主回収を進めている。
ネット情報の著作権とは 不可欠なオリジナリティー (1/3ページ) - MSN産経ニュース


女性は「あひるさん、ありがとう」というタイトルの文章を「小さな親切」運動本部のキャンペーンに応募し、平成16年度の日本郵政公社総裁賞を受賞した。サンクチュアリ社は「最後のパレード」にこの作品を「無断引用した」と認めたが、運動本部側の求めた自主回収には応じていない。
TDL本、盗用された女性が声明「聖域へ土足で踏み込まれた」 (1/2ページ) - MSN産経ニュース


同書については、収録されていたエピソードが、「小さな親切」運動本部のキャンペーン入賞作を無断引用していたことが判明し、同本部が新聞への謝罪文掲載や自主回収を要求。サンクチュアリ側は同本部に謝罪したものの、自主回収は拒否して販売を続けていた。しかし4月30日午後、同本部の代表らが記者会見し、あらためて自主回収を求めていた。
TDL本「最後のパレード」ついに自主回収「著作権侵害複数あった」 - MSN産経ニュース

共同通信(47NEWS)

複数の新聞社の共同体なので、表記にぶれがある事がある47NEWS、記事の絶対数が多いため、使用例は多いのですが、使用率はそんなに多くない印象を受けます。


消費者金融問題に関する著書の内容を無断引用され著作権を侵害されたとして、名古屋市の弁護士ら5人が25日、テレビ出演などで知られる石丸幸人弁護士と代表を務める「アディーレ法律事務所」(東京)に、約630万円の損害賠償と石丸弁護士が執筆した本の販売禁止などを求め、名古屋地裁に提訴した。


訴状によると、石丸弁護士と同事務所は2007年と08年、消費者金融から過払い金を回収する方法を解説した本2冊を執筆、監修した。その本の中で、原告弁護士らが「名古屋消費者信用問題研究会」として06年に共同執筆した2冊の本から文章や図表など計75カ所を無断で複製、翻案して利用した。
石丸幸人弁護士に賠償請求 「無断引用で著作権侵害」 - 47NEWS(よんななニュース)


大学院生の論文を無断引用して発表資料を作成したとして、国際基督教大(東京都三鷹市)を解雇された元教授の男性(53)が地位確認などを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は18日、解雇を無効とし賃金などの支払いを命じた一審東京地裁判決を支持、大学側の控訴を棄却した。


房村精一裁判長は「無断引用して学会発表の要旨を作ったのは男性が指導していた別の院生で、男性は無断引用の事実を知らなかった。解雇に合理的な理由はない」と判断した。
教授解雇、二審も無効判決 「論文無断引用は院生」 - 47NEWS(よんななニュース)


毎日新聞の日曜版別刷り「日曜くらぶ」に掲載された連載記事「ロバート・キャパ 知られざるその素顔」で、出所を明らかにせず作家の沢木耕太郎さんの著作を無断で引用していたことが1日、分かった。同社は同日付紙面で沢木さんらへの「おわび」を掲載した。
沢木さんの著作を無断引用 毎日新聞がおわび


道議六人が四月に行った公費による韓国への海外視察の報告書の大部分が、日本国内で入手した資料やインターネットからの無断引用だったことが二十二日、分かった。道議らは事実を認め、既に道議会事務局に対し、報告書に引用元を追加する修正を届け出た。
韓国視察報告書 6道議が資料無断引用  - 北海道 47NEWS(よんななニュース)


朝日新聞西部本社は8日、元衆議院議員で弁護士の辻恵氏の著書に連載記事と酷似した表現や構成があるとして、辻氏と出版元に抗議したことを明らかにした。


(中略)


イプシロン出版企画は共同通信の取材に対し、朝日新聞の鹿児島県版に掲載された連載記事から無断引用したと認めた。
同社は、南日本新聞社(鹿児島市)に対しても無断引用を認め謝罪している。
朝日新聞も無断引用と抗議 辻恵元衆院議員の著書


兵庫県播磨町の町会九月定例会で一般質問した町議が、県外の県議や市議による過去の質問のほぼ全文を無断で引用していたことが、分かった。


(中略)


無断引用が判明したのは、小西茂行町議(無所属)が十日、町長交際費の支出▽教育行政の推進-の二項目について行った一般質問。


(中略)


小西町議は五期目で議長などを歴任。取材に対し、無断引用を認めた上で「簡潔で理解しやすかったので引用しただけ。議長に認められた通告文で問題はない。質問の内容が重要」としている。
神戸新聞|社会|播磨町議、一般質問で無断引用 県外議員のHPから


山口県から棚田保全モデル実証事業の報告書を受注した民間会社が、地元の郷土誌から複数カ所、無断引用していたことが21日、分かった。この会社は「不適切だった」と認めている。
山口県発注の書類に無断引用 - 47NEWS(よんななニュース)


前橋市立前橋工科大(江守克彦学長)が学生便覧などに掲げた3つの教育理念が、岡山大からの無断引用であることが26日、分かった。前橋工科大は新しい理念を作成中で、学生に経緯を説明する予定。
岡山大の理念を無断引用 前橋工科大「新しく作成」 - 47NEWS(よんななニュース)


平凡社の本に無断引用 出版社と著者に謝罪  平凡社が昨年9月に出版した横山良一著「山頭火と四国遍路」に、海鳥社(福岡市)が同年6月に刊行した「うしろ姿のしぐれてゆくか」から無断引用した文章が計6カ所あることが23日、分かった。
平凡社の本に無断引用 出版社と著者に謝罪


読売新聞社などが主催した少子化問題に関する意見募集で「読売新聞社賞」を受賞した山梨県内の大学生(23)の論文に「別の論文から無断引用したとみられる部分が多数ある」として、同社は24日までに大学生の受賞を取り消した。
少子化の論文で無断引用


3日公表された「第4回全日本写真連盟新入会員写真コンテスト」(主催・全日本写真連盟、朝日新聞社)の第1席の金賞作品が、彫刻家の団塚栄喜氏(38)=東京都在住=の壁面彫刻作品「宝の艀(はしけ)」の無断引用であることが分かり、団塚氏は4日、「作品のテーマ性がゆがめられた」と主催者に抗議した。
金賞作品は無断引用 全日写連のコンテスト


道議会としては3年半ぶりに海外視察を行った道議2人が24日、一般質問に相次いで立った。視察報告書をインターネットなどから無断引用し批判を受けただけに、視察先の韓国と比較しながら道の港湾行政の遅れを追及するなど、成果のアピールに懸命だった。
海外視察の「成果」アピール 道議会一般質問でネット引用の2人  - 北海道のニュース - 都道府県別 - 47NEWS(よんななニュース)

メモ

毎月のように著作権関係の揉め事が起きていてその中で「無断引用」ネタが結構ある。

  1. 法律畑のテクニカルタームとしては間違っているが、マスコミ畑のテクニカルタームとしては正しいという解釈はありえるのか?
  2. 無断転載ではなく、無断引用なのは何故なのだろう?

*1:強調は引用者が付けた