情報の海の漂流者

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安倍さんが総理になりそうだから発達障害の友人が焦っている

僕の友人にアスペルガー症候群およびその二次障害のうつ病で通院している人がいるのだが、この人が今、物凄く必死になって受けて入れてくれる支援施設を探している。
「選挙前に支援施設が見つからないと大変なことになる」と考えているらしい。
理由は、来たる総選挙の結果、自民党総裁の安倍晋三氏が総理大臣になる可能性が極めて高く、その安倍氏が、親学推進議員連盟の会長をやっている人物であるからだ。
親学推進協会というのは、日本の伝統的な子育てをすれば発達障害を予防できると考える団体で、発達障害は先天的なものであるとする標準的な医学とは正反対の説を掲げている。
ようするに、「親の子育てが間違っているから発達障害なんかになるんだ」ということを言っている団体である。

親学と発達障害

今年の5月、大阪維新の会がこの親学の思想を取り入れた条例を作ることを検討しているということが話題になった。
この条例案はまさしく「親の育て方が間違っているから発達障害になるのであって、伝統的な子育てをやれば発達障害を予防・防止できる」とするもので、ちょっと発達障害について学んでいる人にとっては明らかにおかしいものであった。

参考

第4章 (発達障害、虐待等の予防・防止)
(発達障害、虐待等の予防・防止の基本)
第15条

乳幼児期の愛着形成の不足が軽度発達障害またはそれに似た症状を誘発する大きな要因であると指摘され、また、それが虐待、非行、不登校、引きこもり等に深く関与していることに鑑み、その予防・防止をはかる

(伝統的子育ての推進)
第18条
わが国の伝統的子育てによって発達障害は予防、防止できるものであり、こうした子育ての知恵を学習する機会を親およびこれから親になる人に提供する

(発達障害は主に後天的なものである、という説を採用している)


条例案は、大問題になり、騒ぎを知った大阪市長橋下徹氏も、"発達障がいの主因を親の愛情欠如と位置付け愛情さえ注げば発達障がいを防ぐことができるというのは科学的ではないと思う。"と述べるにいたり、立ち消えになった。





(大阪の騒動の詳細が知りた方は 大阪維新の会 トンデモ条例案の黒幕 - Tech Mom from Silicon Valley あたりを参照)
この時は条例が作られることがなかったものの、条例案の背景にある「親学」は現在でも温存されたままで、この手の法律が再び提出される恐れは依然残っていて、当事者や発達障害について関心を持っている人たちはずっとその辺に注目していた。

参考


そういう情勢下で、安倍晋三氏が自民党総裁になり、さらに衆議院が解散されたことで、「親学推進議員連盟」の会長が近い将来総理大臣になる可能性が非常に高くなっているのが現在の政治情勢だ。だから友人はたいへん焦っている。
発達障害に対する公的サポートが大きくシフトする可能性は高いし、その変化は望ましいものではない。そして施設内部の人の思想なんて外部からは分かり難いものなので、変化が起こってから施設を探すとなると、標準医療に基づく支援を受けることができるかどうかは博打になってしまう。だから選挙前に受け入れ先を探しておきたいという理屈だ。
とりあえず彼は今、主治医に紹介状を書いてもらうところまでは行ったらしいが、そんなに急いでしまうと、適正にあったサポートを受けることができるのかどうかちょっと心配でもある。いい方向に進むといいのだが。